5月の言葉(死中得活)




死中(しちゅう)(かつ)()


禅語でよく使われる「死中に活を得る」は『碧巌録』に、しばしば出てきます。

 

この語は「絶対絶命の場で 活路を開く」という意味です。

 


死中に活を得たり


―――従来の常識理解を ことごとく脱却することをといい、

 

この境地より復活して、

 

再び働き出すことをといいます。

 

 

ではよく「大死大活」、「大死一番、大活現前」「大死一番、絶後再蘇」といいます。

 

 

この場合の、大死一番は 

 

「まず死んでこい」ということです。

 

 

もちろん 肉体的なを意味するものではない。

 

 

という

 

人間にとって一番大切な問題を全身心でとらえて、

 

そこから、生への飛躍を求めるということです。

 

 

いたずらに死ぬことは「大死」ではなく、「犬死に」です。

 


窮地 に 陥る(きゅうちにおちいる)


―――決断を迫る事態というものは、

突然にやって来ます。

 

そんな時、あれこれ思い迷って、じたばたすればするほど深みに落ちます。

 

 

そこで危機に直面したら、どんと腹をえて、

 

大死一番

 

一切を捨てて 捨てて 捨て切る。

 

 

死んで 死んで 死に切って、

 

生きながら死人になり切り思いのままに働く

 

 

徹底して、この境地をつかめば、

 

妄想や迷いを 捨て切った「」が(よみがえ)ってきます。

 


決断こそが命だ


敵中突破する島津軍「関ヶ原合戦屏風」
岐阜市歴史博物館蔵


―――関ケ原の合戦で西軍が総崩れになった時、

 

薩摩(さつま)島津(しまづ)義弘(よしひろ)の部隊だけが、東軍(徳川家康) 十万の猛攻を堪え隊形を崩さなかった。

 

 

このとき、誰の目にも、義弘に残された道は、

 

降伏か、死か、敗走しかないと思われた。

 

 

禅の極意を極めていた義弘は、

 

西軍敗走の中、黙然もくねん端坐たんざしていたが、

 

起ち上がるや 戦場を観望し 敵中突破の道を決断した。

 

行動は迅速であった。

 


島津義弘公 馬上姿
鹿児島市立美術館蔵


義弘全軍の先頭に立ち、家康の本陣目がけて突進し、

 

衝突直前にサッーと右へそれて、伊勢街道から堺に出て、海路鹿児島に帰りついた。

 

 

島津は関ケ原で剽悍(ひょうかん)決死の戦いぶりをみせたため、

 

西軍に参加したにもかかわらず、家康におそれられ、領地没収、減封(げんほう)の処分をうけなかった。

 

義弘危機における決断島津を安泰たらしめた。

 


生死透脱(しょうじとうだつ)


―――義弘は 瞬時(しゅんじ)逡巡(しゅんじゅん)も許されない。

 

絶体絶命の状況下で、

 

大死一番討死(うちじに)を覚悟し、生死を超えた心境に達した。

 

 

討死は、自己の否定である。

 

自己を否定し切った所から 新しい生命力と発想が生まれてくる。

 


                 生きながら、死人になりて、なりはてて、

 

  思ひのままに するわざぞよき

 

 

()(どう)無難(ぶなん)禅師

 

 


これは 義弘だけでなく、


政治家、経営者は、

 

コロナ危機後グローバル経済激変の荒海の中で、

 

日本の(かじ)()りをする指導者として、真に生きようとするならば、

 

自分を大死という極限状況に置くことによって

 

蘇らせることが、緊要です。

 

 

大死一番、絶後再蘇

 

 

これが危機管理に処する禅的発想法です。

 

 


大死一番は、     

 

禅者に限らず、

 

人間だれしもが、

 

とくに男が心して 通らなければならない 人生の関門です。

 

 

この関門を自覚して通るか、

 

通らぬか。

 

それによって、その後の人生の展開が 大きく変わります。

 

 


自分に勝つ


―――禅の修行は、

 

自分の弱さを自覚し、

 

 

日々を 腹に据えて果敢に生きる」

 

 訓練、また訓練

またまた 訓練の積み重ねであります。

 


令和2年 5月 1日

 

               自然宗佛國寺 開山  こくけん もくらい 合掌


自然宗佛國寺:開山 黙雷和尚が、
行脚(徒歩)55年・下座行(路上坐禅)50年 得たものをお伝えしています。

 

下記FB:自然宗佛國寺から、毎月1日掲載

 

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感謝合掌  住持職:釈 妙円


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